選手が野球に集中できるようにすることが僕の仕事。千葉ロッテマリーンズ通訳・田原大樹さんインタビュー

日本プロ野球・千葉ロッテマリーンズで通訳スタッフとしてお仕事をされている田原大樹さん。外国人選手からの信頼も厚い田原さんに、プロ野球選手の通訳という仕事のお話を聞いてきました!

試合や練習よりも、私生活を共にする時間の方が多い

2015年はどんなシーズンでしたか?

今年は長いシーズンでしたね。
チームもクライマックスシリーズまで進出しましたし、僕が担当していたルイス・クルーズ、アルフレド・デスパイネ、カルロス・ロサの三人が活躍したんで、その分取材もヒーローインタビューも増えて、とても充実したシーズンでした。
クルーズにはオールスターにも連れて行ってもらいましたし、そういう意味では今までのシーズンより印象に残る年だったと思います。

マリーンズで働いて7年になりますが、オールスターのベンチは初めての経験だったので、お恥ずかしながら他球団の選手たちと写真をたくさん撮ってきました(笑)
ただやっぱり、最後勝てずに日本シリーズに行けなかったことが、とても悔しかったですね。

野球選手の通訳と一般的な通訳業務との間に、違いはありますか?

やはり一番大きな違いは、通訳以外の仕事をたくさんするということでしょうか。
僕らはボール拾いもやりますし、選手の道具の片付けもしますし、あくまでもチームスタッフという立場なので、やれることは常に探して動けるようにしています。

試合に関して言えば、
ピッチャー(ロサ)とバッター(クルーズ、デスパイネ)は試合中にいる場所が違うので、ベンチとブルペンをしょっちゅう往復するんですね。
だからあっという間に試合が終わります(笑)

常に選手のそばにいらっしゃるんですね

試合や練習よりも、私生活を共にする時間の方が圧倒的に多いですね。
買い物にも付き合いますし、病院にも付き添います。
この辺の病院はしっかり把握していて、選手の子供が発熱したときなどにも、すぐに対応できるようにしています。
この前は、選手の奥さんが妊娠されて、産婦人科まで付き添いました!

1枚目:田原通訳とデスパイネ選手
2枚目:クルーズ選手とロサ選手

それだけ長い時間一緒にいると、選手の気持ちの変化などもわかりますか?

いまカチンと来たな、ってのはわかりますね(笑)
基本的には100%通訳をしますが、モチベーションを上げるのも私の大事な役割なので、選手たちがちゃんと聞いてくれるように、ニュアンスを変えて訳すこともあります。
やっぱり日本人と外国人の価値観は違う部分はあるので、多少なりとも調整は必要だと思いますね。
ただ、ここぞ!というときは、監督やコーチの勢いそのまま伝えますよ。

子供インタビューコーナー!

「僕はプロ野球選手になりたいんですけど、小さい頃の夢はなんでしたか?」(ユウマくん10歳)

いまの歳に夢があるだけ凄いと思います!
僕は高校生のときまでやりたいこともなくて、卒業のときに進路どうしようかなあなんて考えながら、ふと中学校の卒業アルバムを見たんですよね。
そしたらそのアルバムに「将来なりたい職業:通訳」って書いてあったんです。

そうだ俺、通訳なりたかったんだ、って(笑)
それで千葉の神田外語大学に通うようになり、在学中にメキシコのグアダラハラ自治州大学に留学しました。
卒業後は、外務省の日墨政府交換留学の試験に合格できたので、メキシコ国立大学に一年間留学しました。
やっぱり現地で人とコミュニケーションをすることは、語学習得には効果てきめんで、その頃の経験が今の仕事にもとても役立っていると感じます。

メキシコでスペイン語を勉強した理由として、
スペイン語って世界で4番目に多く使われている言語で、国でいうと20カ国以上あるんですね。
なので、スペイン語を覚えておくことは、プライベートでも仕事でもアドバンテージになると思いました。
そこで、高校のときの先生がスペインに詳しかったということを思い出して、すぐにアプローチしたら、「じゃあ俺が手伝ってやるよ!」って(笑)
いろんな人に助けてもらって、今の自分があります。

自分でもうろ覚えの夢ですが、ちゃんと通訳の仕事に就けたのは幸せですね。

「英語が上手になるコツはありますか?」(シュウマくん8歳)

その言葉が好きか嫌いかって重要だと思います。
モチベーションがないと、勉強って続かないですよ。
例えば有名な外国人選手や、外国人の芸能人でもいい。あの人と英語で話してみたい!っていうのが、勉強する原動力になると思うんですね。
もちろん学校での勉強は子供の義務なので、しっかりやる必要がありますが、学びたいことを学ぶ!って意識が重要かと。
しょうがなしにやる勉強と、やりたいからやる勉強では、効果が全く違ってきますよね。
なので子供のころは、語学勉強に限らず、まず自分が好きなことを探して、それを嫌いになってしまうまで打ち込んでみてはどうでしょうか。

好きなことに打ち込むことが大事だと教えてくれた田原通訳。
自ら子供たちに質問するなど、子供たちの質問に真剣に答えていただきました。
子供たちも、プロ野球という夢の世界と、外国語を駆使した通訳の仕事に興味津々のようです。

試合に勝つことができたら、それ以上に嬉しいことはない

お仕事で難しい局面はありますか?

ベンチ内で、意見の食い違いによる口論が始まった場合は、やはり緊張します。
一級の人たちが真剣に野球をやっているので、起こりうることなのですが、やはり通訳する際の言葉のチョイスは難しいです。放送禁止用語なんかもバンバン飛び交っているので。

言い争っている時は感情が昂ぶっているのですが、
その日の夜に外国人選手から

「俺、言いすぎちゃったよね…」

みたいな電話がかかってきたりもして(笑)
そんなときは「一緒に謝りに行こうか!」と、選手を誘い出します。
戦術やコーチングの伝達も大切ですが、コミュニケーションを円滑にさせることがもっと大事だと感じています。

選手間の通訳もされますよね?

もちろん。
仕事でもプライベートでも、通訳が必要な場面は多いです。
外国人選手と日本人選手が一緒に食事に行く機会も多いので、オーダーをしたり肉を焼いたりしながら通訳します(笑)

僕の通訳待ちみたいなタイミングもあるんですが、なるべくそういうのは無くしたいと思っているんです。
選手同士で直接やり取りができるのが一番じゃないですか。なので、必ずしも通訳が必要ではない言葉は、スルーして本人同士のコミュニケーションに任せています。
ヘルプのときは選手と目が合いますから(笑)

お仕事で常に心がけていることはありますか?

野球の技術に関しては貢献できないので、
選手が野球に集中して打ち込める環境を作ろうと、いつも心がけています。

海外での暮らしというのは、僕らが想像しているよりもはるかに神経を消耗するもので、選手の家族たちが日本の暮らしに満足できていないと、選手自身も野球に集中できませんよね。
なので、そこは第一に考えている部分です。

幸い僕は外国人選手たちと歳が近いので、一緒に遊びにいったり、野球以外の関係を大事にしながら、選手との信頼関係を積み重ねていくことも大事なことだと、常に考えて行動しています。

やっぱりチームが勝つと最高の気分です!
選手たちが野球に集中して、試合に勝つことができたら、それ以上に嬉しいことはないですね。
昔は担当している選手が活躍すればそれで良し、と思っていたこともあるのですが、やはり今年優勝できなくてとても悔しかったですし、ベンチの中では毎試合応援していますよ。

v将来、語学を活かした職業に就きたい子供たちに、メッセージをいただけますか?

語学を活かした仕事をしたい、という明確なビジョンがあるならば、吸収力の高い子供のうちから、やれることを全てやるべきだと思います。
先にも言いましたが、好きなことにとことん打ち込む。嫌いになるぐらいまでとことんやってみましょう。

また勉強以外にも、出会いを大事にしてもらいたいと思います。
僕自身、いろんな出会いのおかげで、今は千葉ロッテマリーンズで通訳をさせていただいているので、子供たちにも、日々の出会いの一つ一つを大切に過ごしてもらいたいと思います。

インタビューを終えて

選手顔負けのスタイルを持つ田原通訳は、
サッカーやキックボクシングやゴルフ、さらにはマラソンなど、プライベートでもアクティブに体を動かされているそうです!
お話を聞いていても「すごい行動力!」と、スタッフは感心しきりでした。

好きなことにとことん打ち込んで、
人との出会いを大切にする。
是非、子供たちに教えてあげたい言葉ですね。

田原大樹さんプロフィール

1985年5月17日生まれ、北海道札幌市出身のAB型。

2004年に札幌市立開成高校を卒業後、神田外語大学スペイン語学科に入学。2008年、同大学を卒業。
在学時の2006年、グアダラハラ自治州大学に留学し、卒業後は外務省日墨政府交換留学の一員として、メキシコ国立大学に留学し、考古学を専攻。
2009年6月から千葉ロッテマリーンズに通訳として勤務。

趣味はゴルフ、キックボクシング、スポーツ観戦。

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