見つけた夢を大事にして夢中になろう!『どうぶつしょうぎ』の生みの親 プロ女流棋士 北尾 まどかさんに聞く夢の追い方

プロ女流棋士で『どうぶつしょうぎ』の生みの親、将棋の普及活動とマルチに活躍される北尾まどかさんにjiikids編集部が突撃インタビュー!!
『どうぶつしょうぎ』誕生の秘密が明かされます!

プロ女流棋士、そして将棋の普及活動として

編集部:現在プロ棋士として、また、子どもたちへの将棋普及活動ということで幅広く活躍されていますね!

北尾:はい現在プロ棋士としては女流棋士の二段として公式戦に参加させて頂いてます。
月に1回くらいのペースで対局があるんですけど、それ以外の日は将棋を普及させるために株式会社ねこまどという会社を立ち上げておりまして、そちらで将棋関連のイベントやレッスンを行っています。

編集部:最近ですと藤井聡太プロ棋士の活動などによって、子どもたちの関心もさらに高まり、教室に通う子が増えたと伺いました。

北尾:本当にここ最近、子どもたちが増えはじめました。
最近は曜日も場所も増やしたんですけど、それでも満席になるぐらい、お問い合わせが後を絶たないです
うちの場合は将棋を始める1歩手前に「どうぶつしょうぎ」と言うものを使って、小さな子どもでも始められるように教えています。
将棋のルールを知らない親ごさんたちにも一緒に参加してもらいたい狙いがあります。

どうぶつしょうぎ はこうして生まれた

編集部:どうぶつしょうぎが生まれたきっかけを教えていただけますか?

北尾:どうぶつしょうぎを作ったのは2008年頃です。
ちょうどその頃も子どもの教室をやっておりまして、そこに4歳くらいの子どもが来たんですね。
その子はたまたまテレビを見て「将棋をやってみたい!」となったそうなんですが、お父さんもお母さんも将棋ができなくて。
将棋は漢字で書かれた駒を使いますし、1回のゲームがすごく長いんです。
大人だと1回1時間くらいかかりますし、子どもでも、どれだけ早くても1回15分以上かかってしまうようなゲームですので、それを一から教えるとなるとある程度の理解力が必要ですし、集中力ももたないですよね。
その子は4歳と小さかったですが、やる気があったので、こちらも一生懸命教えてあげようといろんな工夫をしてる中で、短く終われて、わかりやすい駒である必要があるんじゃないかと思いついたんです。それがどうぶつしょうぎの原形といえますね。

ちょうどその頃、同じ団体に居た藤田さんという方が、子どものために可愛らしい将棋を作るというのをずっとや続けていらっしゃって。
将棋の駒の全てを動物にしたデザインを描かれたんです。
そこで、私の作った3×4のマスの中で遊ぶミニ将棋のルールと藤田さんの作った動物の駒を合わせて「どうぶつしょうぎ」というものが生まれたんです。
2009年に発売されましたが、それまではそういった子ども向けの将棋の商品がほとんど無かったんですよ。
将棋というとどうしても大人の(特に男の人の)ゲームという印象が強かったんですが、知的なイメージが強かったんでしょうね。子どもにやらせたいと思うお母さまたちがとても多く、どうぶつしょうぎも大好評を得ました。
「これなら私にも教えられる!」
「一緒に遊べる」など、どうぶつしょうぎが広まって、今では教えにいくと子どもたちの過半数が、過去にやったことあるよって手を挙げてくれるぐらいにまで認知されました。

編集部:わたしも息子に将棋をやらせたかったので、どうぶつしょうぎのアプリが便利でした。

北尾:ちょうどアプリでもサイズ的にぴったりなんですよね!
3×4のマスがハマりますし、一般の将棋だと9×9でスマホの画面だと少し窮屈です。
どうぶつしょうぎは将棋と比べて駒も大きくしましたし、そもそも本来40枚ある将棋の駒が8枚までになっているので、覚えることも容易です。
とても手軽にプレイできるようになったかなと思います。

あとこれは藤田さんのこだわりでもあったんですけど、赤ちゃんでも積み木みたいに遊んで駒に馴染んで貰えるように、木製の形や駒の厚みを計算しました。
誤って飲み込んでしまわないようなサイズにもして、安全面もこだわっています。
現行のモデルも、一番初めに開発した時のサイズとほぼ変わらないんですよ。

編集部:駒の動きがわかりやすいのが子どもにはとてもわかりやすいそうです。

北尾:そうですね、このイラストって言うのは藤田さんの提案なのですが、本当に覚えることが少なくて一目瞭然です。
例えば一般将棋の「金」とかだと、前3つと横と後ろは進めるけど、斜め後ろは進めないよと説明しなくてはならないのですが、どうぶつしょうぎの場合だとイラストに描かれているので、一言で説明できますよね。
限界までシンプルなので、キリンさんは前と後ろ、象さんは斜め、ひよこは前1つだとか簡単に伝えられます。

ライオンマーチ制作秘話

ライオンマーチ

編集部:アプリで流れているBGMがかわいいですね!

北尾:それはライオンマーチです!
どうぶつしょうぎの売り上げが拡大されてきたタイミングで、どうぶつしょうぎの本を書いたんですね。
駒の説明を詩のテイストで章扉に書いていたのですが「それ歌にしたらいいんじゃない?」って話になりまして。
藤田さんと一緒にノリで「これ楽しそうだよね!」って感じで作って(笑)ベースとなるメロディーラインを藤田さんが考えられて、私がちょっとアレンジを加えて、どうぶつしょうぎのテーマソング「ライオンマーチ」が出来ました。

編集部:なるほどそういう経緯があったのですね!

北尾:そうなんです。
7番まであって、ルールや動かし方をわかりやすく歌に盛り込んでいるのですが、私があちこちに教えにいったときに、幼稚園で子どもたちがみんなで歌ってくれたことがあり、その時は本当に感動しました。

編集部:北尾さんと藤田さんの普及活動への愛情がたっぷり詰まった作品ですね。

北尾:本当にいろんなところに工夫を凝らしました!

こうして将棋人生が始まった

編集部:幼少期の頃の話を少々お伺いさせてください。将棋に初めて触れたのはいつ頃なのですか?

北尾:私もはっきり覚えていないんですが、多分小学校上がるか上がらないか位の頃だったと思うんです。
父親が囲碁とか将棋の番組を日曜日によく見ているタイプの人だったんです。
子どもの頃、私はボードゲーム類がとても好きで、家にいるときは父親と遊ぶことが多かったのですが、トランプやオセロ、百人一首やすごろくなど、たくさん遊びました。
そのなかの一つが将棋で、父親に教えてもらったんです
それ以前からチェスはけっこう出来たんですけど、将棋はあまり得意ではなく、最初は山を崩して駒を取っていくやつや、まわり将棋などから親しんだ記憶があります。

そこから時が経って高校生時代に、またボードゲーム熱が再燃しまして。
私が通った高校は半分が内部進学、半分が外部の人たちで、コミュニケーションの一環としていろんなゲームをやったんです。
オセロとかトランプとか色々あったんですけど、その中に将棋もあり、その頃はある程度成長していましたんので、将棋の奥深さとか面白さといったものに気がつき、すっかりハマりました。
周りの子たちが進学を考えて大学受験の勉強をしてるときに、

私はもう将棋の道に行く!って。

そこからプロ棋士を目指しまして、20歳の時にプロになりました。

編集部:将棋以外に他に興味をもったものはありますか?

北尾:読書が好きでした。
実は外遊びがそんなに得意じゃなくて、4歳の頃から音楽をやっていました。
バイオリンの練習をずっとやっていて、それで家にいることが多かったんですけど、やっぱり外で遊んだりドッジボールとかをすると、指を痛めてしまったりすることがあるじゃないですか。
なのでそういうものを避ける意味もあって、家で本を読んでいましたね。
まぁインドアな子どもだったんです(笑)

本を読んだりいろんな考えごとをしたりだとか、そういうのが好きだったので、ボードゲーム類は性に合っていたんでしょうね。
しっかり考えて相手と勝ち負けを競うだとか、一緒に相手と新しいものを作っていくというのが、とても好きでしたね

編集部:どんな本を読んでいましたか?

北尾:小さい頃…どれくらい小さかったかにもよりますが、小学校2年生くらいの時は『はてしない物語』とかよく読んでいましたね。
ミヒャエル・エンデの本は大好きでしたし、本当になんでも読んでいたので、学校の図書室にある本はほとんど読んでいたんじゃないかな。
シリーズ物で色々あるじゃないですか。それを片っ端から読み終えて、読むのがなくなったら分厚い辞書を読んでました(笑)

将棋教室運営について

編集部:教室でたくさんのお子様に将棋を教えられていると思うのですが心がけていることとか注意していることとか何かありますか?

北尾:まずは楽しいと思って貰えるようにすることが一番だと思っているので、子どもたちが飽きてきたらまた別のプログラムを色々考えるようにしています。
また、礼儀作法にも重点を置いています。
例えば挨拶をしっかりするだとか、道具を大事にするだとか、将棋だけではない基本的な姿勢をしっかり教えるようにしています。

将棋の内容については、子どもたちの主張をなるべく優先させてあげたいと思っているので、ちょっと悪い手だなぁと思っても、「どうしてこうやったの?」と狙いを聞いてみます。
ちゃんと自分なりの狙いを持って打った手に関しては、それを実現させるようにこちらも手を調整して、成功体験をさせてあげることから始めます。
そこから、こう対応されたら失敗してしまうよね、といった両方のパターンを見せてあげることで、技術の向上やパターンの定着を促しています。
子どもたちの「気付き」をどれだけ伸ばしてあげるかが重要だと思っています。

編集部:教室には親ごさんも一緒に参加されるのですか?

北尾:そうですね、基本的にグループレッスンになるので、そこからは子どもだけで参加する形ですが、中には字も書けないうちから将棋を指せてしまう子どももいて。
その場合は、プリント記入の補佐でお母さんが参加される場合もあります。
厳しい親ごさんもいらっしゃって「なんでこうやらなかったの?」とか「こうした方が良かったんじゃないの?」など、自分はわかるからできない子どもにイライラしちゃったりするんですけども、それでそのとおりにやっても別に伸びないんですよ。
ちゃんと自分が工夫して考えて生み出した手だからこそ、その次に行けるのであって、どうぶつしょうぎの大会時には必ず「自分の力で考える」ことを伝えるようにしています。
お父さんお母さんが遠くから見ていて「うぅーん」って言いたそうにしていても、子どもたちだけの空間を必ず確保しています。

今後そして未来の子どもたちへ

編集部:将棋教室の今後のビジョンを教えてください。

北尾:将棋盤の前に座ってなにかしゃべったりする訳では無いけど、一手一手指して会話をしているじゃないですか。
相手のことも考えたり、深く理解しようとする。そういった対人コミュニケーションを将棋を通じて知って欲しいなと思っています。
今の子どもたちは長時間何かをするってことが、少なくなってきてると思うんですよね。特にテレビゲームやアプリだと、いくらつながっていてもプレイ時は孤独です。
相手と対面したり、多くのひとで時間を共有することはとても大事なので、たくさんのお友達を作ってもらいたいなって思ってます。

編集部:将棋に限らず何かを極めようとする子たち、夢を持っている子たちがいますが、継続する難しさや、行き詰まったときに役立つアドバイスはありますか?

北尾:逆に言うと「努力して継続」している時点でダメなんですよね。
自分が本当に好きなことって、止められても続けちゃうくらいずっとやり続けちゃうものじゃないですか?
私は将棋がすごく好きで、ずっと続けたかったからプロになったんです。だからプロを目指したんです。

周りの人が仕事をしている時間に将棋をしてていい、ずっと将棋のことを考えていても許されるっていうのがプロ棋士というもので。
それだけに没頭できる、夢中になれることを見つけることが一番ううんですが、それを見つけるってこと自体が難しいことです。
なので、それを見つけられたらすごくラッキーですし、ずっと集中して、ずっと追いかけてもらいたい。
そのときは親ごさんも辛抱強く見守っててあげて欲しいし、応援してあげて欲しいなぁって思います。

今の時代だと本当に色んなことにチャレンジできると思うんです。
将棋もそうだし、別にゲームの世界だって世界一になるって思ったら、素晴らしい目標じゃないですか。
もちろんスポーツでも勉強でもそうですし、今はいろんなプロフェッショナルがいる時代なので、見つけた宝物にような夢をずっと大事にして、夢中になって一生懸命やって欲しいです!

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